(改)JOJIのことみんな知ってくれ!

JOJIを日本に布教するための雑記だったのが、個人的な音楽のことも書きます

tmrwMagazineでのインタビューを和訳

 

Jojiさんの顔がほぼ隠れている・・・!という衝撃的なルックで表紙を飾った雑誌のインタビューがインターネットにアップされているのを遅ればせながら気づいたので、頑張って和訳してみました。(かなり難しかったので意訳も一部あります。ご了承ください。)

(原文は以下リンクより)

https://www.tmrwmagazine.com/features/music/joji-turning-emotions-into-music

(以下、和訳)

Jojiの細部へのこだわりが、このことを放っておけなかった。

彼はアリが至る所にいるAirbnbに泊まっていて、そのアリがやってきた元の場所であるコンセントの穴にパン粉を運び入れるための列を丹念に作っているのを見つめていた。

時間がとてもかかること。努力が必要なこと。それにJojiは感銘を受けたのだ。

しかし最終的に彼は仕方なく、"Raid=殺虫剤"を買ったのだ。

新しい武器を持って戻った時にはアリは消えていて、アリが努力して作った列を彼はあちこち探し回ったが、彼が冷凍庫のドアを開けてそれを見つけるまでは、アリはどこかに消えてしまっていたように思えた。

「結局、彼らは僕のベン&ジェリーズを欲しがっていたんだよ 」と、27歳の多才なミュージシャンはそう語る。「彼らは自殺行為に及んでいて、袋を取ろうとして冷凍庫の中で全員死んでしまったんだ。僕は凍って死んだ蟻の一握りを冷凍庫からすくい上げたんだ。挽いたコーヒー豆の山のようなアリの死体をね。冗談のように、僕は言い続けたんだ、その甘い甘い、甘い蜜のために何をするだろうか?でも、その次に僕は気づいて、みんなに言い続けたんだ。あなたにとっての蜜とは何か、その蜜のために望んで何をするのか?ってね。」

 

Jojiは前段のアリの同居人の話のように、ニュアンスを大切にしている。

彼自身のアートに彼のニュアンスのすべてを注ぎ込むこと、それは彼が残りの人生をレッセフェール的(自由主義的)な態度をもって彼のアートにアプローチできるように彼を解放するのだ。

彼はお茶目であり、気まぐれであり、予測不能な魅力がある。しかし、88risingからリリースされた2枚目のアルバム『Nectar』では、彼の内省的な面から、厳しくてより現実的な(実存的な)人生の問いに向き合っている。

 

本名をGeroge MillerというJojiは、常に小さな写真フレームを持ち歩いている。

中の写真は時折変わる。

2019年の2月のGQでのインタビューでは、ラッパーのBluefaceをフレームの中に入れていた。今回のインタビュー時では、ロサンゼルス・レイカーズのアレックス・カルーソだった。「彼には健康でいてほしいんだ」と彼は言った。過去にはBon Iver(米ウィスコンシン州出身のシンガーソングライター=ジャスティン・ヴァーノンのソロプロジェクト)、Lil Pump(ラッパー)や RadioheadのThom Yorkeなどがこの写真フレームの治療を受けてきた。

 

「他の人に、僕の人生においてすごく重要な人々であると説明するためにストックしていた中年の人たちの画像をただランダムに印刷したことから、ジョークとして始まったんだ。」とJojiは説明する。「写真フレームを取り出して友達の前において、そのフレームに入れた50歳のエクアドル人の男性の写真を見せて、さも彼を恋しく思っているかのようにため息をついたら、そのジョークがマジでウケたんだよ。あと、僕はこれが魔法の額縁だと思ってるんだ。この額縁に入ったアーティストはみんな、数ヶ月後にはスーパープラチナムヒットになるんだ。今度は自分の写真を入れてみようかな(笑)。」

 

7月9日にJojiのシングル "SLOW DANCING IN THE DARK "がプラチナムヒットを記録した。2018年のデビューアルバム『BALLADS 1』の2曲目に収録されている同曲は、3月27日に2度のマルチプラチナを達成したのだ(RIAA調べ)。この日豪ハーフのアーティストは、ビルボードチャートのTOP200において3位を記録した『BALLADS 1』によって、アジア出身のアーティストとして初めてビルボードR&B/ヒップホップ・アルバム・チャートのトップに立った人物となった。

言い換えると、次に小さな写真フレームの中に入る栄誉を受ける人物は、実際にそのマジックを必要としている人でなければならないのかもしれない。

 

BALLADS 1からNectarまでの間の成長をファンにはどう見えるだろうかと聞かれたJojiは、はにかみながらも「3インチ」と答えた。

各アルバムの作曲について聞かれると、

「個人的な意見としては、アプローチの仕方はほぼ同じだと思う」と言い、こう続けた。「時間の管理ができたことが良かったかな。唯一の明確な違いは、今は時々、自分自身を休ませることに価値があると思うようになったことだね。なぜなら、よりクリエイティブなアイディアは最終的に閃くんだよ。物事が早く進みすぎると、行き詰ったり、便秘になったりすることがあるからね。」

また彼はJojiとしての進化がー特にNectarの作成における期間についてーGeorge Millerに洞察力を与えたことについても認めている。

 

「自分でも気づいていなかったポテンシャルが少しだけだけど、確実に現れてきたんだよ。」と彼は言う、「Nectarの制作期間における進化は僕をより良いリーダーにしてくれたし、人生において大事なことをとても明らかにしてくれたんだ。24時間ずっと窓のないスタジオにいて、ミーティングをしていることが、自分がどれだけ自然に依存しているかってことに気づかせてくれたんだ。自然と共にいるか、近くに野性を感じられないと、正気じゃなくてイカれちまうってことにね。」

 

"Gimme Love "のミュージックビデオでそれは明確に現れている。"Gimme Love "は、JojiがNectarのリリースを発表した日と同じ4月16日にリリースされ、"Sanctuary"(2019年6月14日)と "Run"(2020年2月6日)と共にアルバムの先行シングルとしてリリースされた。

JojiとAndrew Donohoが監督を務めた"Gimme Love"のビジュアルでは、Jojiはオフィスの環境に閉じ込められた、神経質な科学者を演じている。彼は必死に出世を目指し、 “Gimme, gimme love, gimme, gimme love (Oh),” とコーラスのピークで、熱狂的なビートに乗せてそう歌うのだ。"When I'm gone, when I'm gone. "と突然に、そして同時にシームレスに、アップビートなポップスから哀愁を帯びたバラードへと変化していくのだ。並列されたその2つのペースは、その作り手を反映しているかのように思える。

 

「僕の直感かな 。」と彼は言い、なぜ彼が2つの曲を1つのトラックに詰め込んだかを説明した。「その方法でレイアウトされていることが必要だったんだ。僕はアップビートな曲を作るのが好きだし、その全く正反対の曲を作るのも好きなんだ。サウンドと同じくらいダサいもの、"リアルに聴く"という体験を取り込んだ曲だったんだよ。一昔前は、曲はもっと長かったし、誰もがその曲の”好きなところ”があってーそういう今では流行ってないものがあったよね。そういう懐かしさを取り入れたいと思ったんだ。」

 

Gimme Loveのビデオの最後で、彼は宇宙飛行士を演じている。オーケストラが鳴り響く中、彼は宇宙へと飛び立つのだ。"Caught in a river of records and dreams(記憶と夢の川に捕らわれて) "と歌い、孤独の中へと上昇していく彼を微笑ませるのだ。"Oh, you will keep up with me? (君はついてきてくれるのかな)/Everyone’s looking for someone to hold (

誰もが抱きしめる誰かを探している ) / But I can’t let you go(でも君を放すことはできない)"と。

 

「語り手は、恋人や、または受け取る側がそれらのことを忘れ、時間が経つにつれて必然的に忘れていってしまう記憶の流れの中で、さらに洗い流されて記憶を失ってしまうことを予期しているんだよ。 」とアウトロ(楽曲の終わりの部分)について彼は言う。「人の顔を想像しにくくなって、声の記憶は時間の経過とともに歪んでいくんだ。語り手は、時間のそういった短所を認めながらも、少なくとも結局は、決して忘れることはないと約束しているんだ。」

しかし、もっと大きなメッセージがそこに込められている。

 

"CERTAIN EMOTIONS THAT ARE NEARLY IMPOSSIBLE TO PUT INTO WORDS CAN BE TEASED OUT VIA SOUND"

"言葉にすることが不可能に近い感情は、音を通じて引き出すことができるんだ"

 

「誰かが『The Office』のエピソードでこんなことを言っていたんだ、『後から気づくのではなくて、古き良き時代に生きていることをその時に知ることができれば良いのに』みたいな、そんな感じのことを言っていたんだよ。」と彼は言う。「物事が早く過ぎ去ったり、急かされていると(今の世界において)、僕たちは大切なことを見失って、単純に他のことを楽しむことを忘れてしまう。そして、ライフワークであるかもしれないものを完遂させたとしても、そこに至るまでに何を犠牲にしてきたかを知るとそれらの瞬間は何も意味のないものに思えるかもしれない。先見の明があるように思えることが、時には自分にとって大きなダメージを与える悪魔にもなり得るんだよ。60歳を過ぎた人が時間に関する多くのことに後悔しているのを目にすると、すでに過ぎ去ったことを後悔することで人生を終えることにならないように願うだけだよ。」

 

The Office”のシリーズの最後で エド・ヘルムス演じるアンディ・バーナードが『君が実際に去っていく前に、君が古き良き時代にいたことを知る方法があればいいのにと思うんだ。誰かそのことを歌った曲を作ってくれないかな。』と切実に語っているのだ。

(実際のシーンの抜粋)

Jojiは、当然のことのように、注目していたのである。

Jojiの内なる部分に入り込むことは難しいが、人に委ねると彼が選んだ壁には丁寧に対応している。

オーストラリア人とのハーフであることよりも、日本人とのハーフであることの方が注目されていることをどう思っているかについての質問には、彼は敬意を持って断っている。彼は自分のルーツがどのように彼の音楽的な方向性に影響を与えているのかについては、答えを持っていない。

もしJojiの音楽において芸術的な面を明らかにしていなければ、この境界線(壁)はもっと大きな謎になっていただろう。彼を知ることはできるが、それは音楽を通じてでなければならない。彼は、彼のコードを解読するための道具を与えることにとても慎重であり、音楽は彼が表現したり、処理したりするのに苦労するようなことの手助けとなっているのは確かである。

 

「言葉にすることが不可能に近い感情は、音を通じて引き出すことができるんだ。」と彼は言う。「僕は自分の考えを言葉にすることに苦労してきたけど、個人的に自分が聴きたい何か(音楽)を完全にコントロールできるようになってからは、気持ちが確かに楽になったんだ。」

 

Jojiは 「ハッピーな音楽 」や 「気分を上げたいムードの音楽」 を好んで聴くが、彼自身はダークで、挑発的な音楽を作る傾向があるという。

”In Tongues“は、2017年11月にJojiとして初のプロジェクトとしてリリースされた。メランコリーなリードトラック”Will He”は彼のキャリアの躍進に火をつけた。5,370万回再生されている、そのミュージックビデオでは、Jojiが自分の血で満たされたバスタブに浸かっている姿が描かれている。「これは、さまざまな解釈ができるダークミステリーなんだ。」とJojiはプレスリリースで "Will He "について語っている。「この曲は、誰かを失うことについて歌った古き良きバラードなんだけど、誰かを失うことに少しクレイジーになっているということを除いては、誰にとっても意味のある曲だと思う。もしお互いがクレイジーになっていたとしてもね(笑)。どれだけ害のある関係性だったってことに正直になることは大事なんだ。」

同じようなテーマの雰囲気をもった、EPに収録されている他の5曲は"Pills"、"Demons"、"Window"、"Bitter Fuck"、"worldstar money (interlude) "というタイトルが付けられてる。

Jojiがそういった切ない情景を反映させ続けているのが、"SLOW DANCING IN THE DARK "を筆頭とした アルバムの"BALLADS 1 "である。映画のような世界観で描かれた"SLOW DANCING IN THE DARK"のミュージックビデオでは、白のスーツに黒の蝶ネクタイのボロボロの姿のJojiが現われる。彼が身体的に傷ついているのは明らかで、タバコを吸いながら雨の中をウロウロし、その背中は矢で撃たれており、スーツは次第に白から赤へと変化していく。

作品作りの過程で彼が大切にしているものの破片の全てが1つになるのだ。彼が曲作りをする際にはインストゥルメンタルから始めるが、「映像としてのポテンシャル」が見えてこない限り、作品作りの進捗が進まないのだという。

 

Jojiが"SLOW DANCING IN THE DARK"を通して成し遂げたことが、"Gimme Love"や"Run"、そしてNectar全体の礎となった。

 

「ダークなものに傾倒するつもりはないんだけど」と彼は言い、こう続けた。「みんながダークなものに共感してくれているように見えるから、だから、ただ、ファンに共感してもらえるものを届けたいだけなんだ。」

 

ファンと繋がりたいという気持ちが彼も人間としてあるようだが、彼はファンに手を差し伸べる時にはかなり意識しているようだ。

 

Jojiは現代社会において、どれだけの刺激が(あるいは「どれだけの数の刺激」が)存在しているか(存在するか)ということに頭を悩ませている。

そこには、多すぎるほどある、と彼は言う。

「自分の身の回りにある"刺激"は、少なくとも僕を導いてくれるものであったり、何か将来に役立つものであったり、インスピレーションの元になったり、単純に僕の知識を広げてくれるものになるかもしれない」と彼は言い、「時間を無駄にしていないことを確認するためには何でもいいんだ。無駄にした時間を楽しんだのであれば、実際には無駄にはなっていないから、僕の言葉を鵜呑みにしないでほしいんだ。」

 

Jojiは質素な人物である。16歳の時に初めて買った本物のマイクであるC-1Uを今でも大事にしている。ケースを買うことはなく、Tシャツに包んでいつもどこにでも持ち歩いている。いつも身の回りに置いていて、気が向いた時にいつでも録音できるようにしている。彼がヴィンテージのMP3プレイヤーを持っている理由については、「もしあなたの曲がもっとも安いMP3のプレイヤーで良く聴こえるのであれば、少なくともどんなMP3プレイヤーでも良く聴こえるからね。」とニューヨーク・マガジンのインタビューで答えている。

 

そうやって彼は、技術という面に立ち返り、大事にしているのである。

 

Jojiにとっての”Nectar(蜜)"とは何なのだろうか?その蜜のためには彼は何を望んでやるのだろうか。その答えはアルバムのトラックリストの中に深く埋められ、隠されているのかもしれない。もしくは彼さえもまだ知らないのかもしれない。いずれにしても、彼は明らかにすることはないだろう。

 

 

「僕はここでちょっとしたクソみたいなこと(※音楽やプロジェクトのことを指していると推測)、あっちでもちょっとしたクソみたいなことをやるんだ。」と彼は言った。「そのクソみたいなことのクオリティは別の話なんだ。次にどんなことをやるかなんてまだわからないし、

もしかしたら、大きなクソみたいなことにすでに着手しているかもしれない。僕はただ、機会を作り出すことにワクワクしているんだ。僕は何か驚くようなことや、先人が残したものに関連するものを追いかけたりはしないんだ。僕は前に進んでいて、僕が聞きたいもの、観たいもの、使いたいもの、味わいたいものを、自分の才能のフィールドの中でリスペクトを持って創り出しているんだ。」

 

その言葉はシンプルで、そしてニュアンスがあって、それ以上に思えた。

(終)