(改)JOJIのことみんな知ってくれ!

JOJIを日本に布教するための雑記だったのが、個人的な音楽のことも書きます

Ballads 1リリース直後の2018年のインタビューを和訳

今回は2018年のインタビュー、Ballads 1がリリースされ、ビルボードR&B/ヒップホップチャートで1位を獲得した直後のインタビューを和訳しました!

 

http://officemagazine.net/test-drive

(以下、和訳)

 

「僕は食事をちゃんと取りたいんだよ。ただ、いつも忘れちゃうだけなんだ。」NYのゴーゴーカレーで、Jojiは日本式のカレーのプレートを前に座り、ぶっきらぼうにそう言った。

 

ソールドアウトとなった88risingとのアメリカツアーを終えて、NYに戻ったばかりの26歳の日系オーストラリア人のシンガーであり、プロデューサーである彼の、今日最初の食事であった。

私の心配する様子に気づいたのか、「昨日は午前中にジャムを塗ったトーストを2枚食べて、それから午後10時にポークチョップを食べたよ。」と彼は付け加えた。

 

私はJoji(本名:George Miller)に、彼の生活の典型的な1日ー友達と遊ぶお気に入りの場所や、好きな食べ物などを詳しく知りたいと伝えたが、彼の仕事以外のパターンに関しては、具体的に彼の口から語られることはなかった。

深夜の散歩と、バスケットボールの試合が時折り入るそのスケジュールは「構造化されてるんだ。」と、彼は強調した。

「僕は常に次のことに意識を集中させているから、食事や掃除のようなことは後回しにしちゃうんだよ。つまり、わかると思うけど10代の男の子のような生活をしているんだ。」

 


Jojiが見る新しい世界に、彼がどのように順応しているかを知ることは興味深く、魅力的である。

サインをしたり、ツアーで世界中を旅したり、新しいファンに出会ったりすることに。


大阪出身、日本育ちの彼はアジア出身のアーティストとして、初めてビルボードのR&BヒップホップアルバムのチャートでNo. 1を獲得したアーティストとなった。彼は、その悪名によりインターネットで広く知られた、新人アーティストではもうないのだ。

しかし、最近の注目度の高さによってメインストリームでスポットライトを浴びるようになるまでは、Jojiは、2008年に彼がYouTubeで始めた様々なオルト・コメディプロジェクトである、いたずら好きで、アンチvloggerのFilthy Frankとしてよく知られた人物であった。

 


無礼で、ミームフレンドリーなユーモアのサブカルチャー全体を築き上げたTVFilthyFrankチャンネルは現在でも600万人のチャンネル登録者があり、スピンオフとなるTooDamnFilthチャンネルには200万人のチャンネル登録者がいる。

新しく作り出した喜劇的なキャラクターであるPink Guyを始めたその時、Jojiは音楽に対するシリアスな情熱を常に内に秘め、育んでいたという。 2017年の初めには、”STFU”や”Nickelodeon Girls”などのシングルを含むデビューアルバムとなる”Pink Season”がiTunesチャートで1位を記録し、ビルボードホット100では70位に食い込んだ。

 


「僕にはいくつかの異なるキャラクターがいた」とJojiは回想する。

彼は健康問題を主な理由の1つとして挙げ、Twitterを通じてコメディから去ることを2017年の12月に発表した。

「そのいくつかは音楽的な意味合いもあったけど、ほとんどはただクソみたいなことを試して、楽しんでいたんだ。計画なんて何もなかったんだよ。ただ、自分を自立させて、お金を稼ぎたかっただけなんだ。」

 


意図せずとも、Jojiのオンライン上での名声にまつわるさまざまな話題に関して触れずにいることは容易い事ではない。

「やあ、Filthy Frankだよね?」とスケートボーダーの少年がセルフィーを頼む前に彼にそう話しかけてきて、我々のインタビューの邪魔をしたまさにその時のように。

そのやりとりは、筋書き通りだったのかと思うほどであった。 Jojiはさりげなく写真のためにポーズをとり、インタビューを再開させ、彼の多様なファン層が想像以上に、いかにシームレスに統合されたかを説明した。

 


「年齢的なものかな、15歳以下だと、彼らは僕のことをFilthy Frankとして知っているし。」とJojiはそう明言した。 「なんていうか、特定の層って感じでもあるよね。ほとんどは若い白人の子供って感じかな、電動のスケートボードを持ってる子供のような気がするな。でも、それ以外のほとんどの人は過去の話を知らずに、僕の音楽を知ることになるんだよ。最初に僕の音楽を見つけてさ、で、こんな感じになるんだよ「え、彼は昔こんな奴だったの?ヤベーじゃん。」ってね。」

 


Filthy FrankとPink Guyのカルト的な拡散性は、2017年に発表されたセルフプロデュース作のEPであり、彼のステージネームであるJoji(彼の本名であるGeorgeの日本語での発音に由来する)名義で初めてリリースされた”In Toungues”の成功に間違いなく影響を与えた。それは、これまでに3億回以上ストリーミングされ、iTunesのR&Bチャートで第1位となった。また、それは1位となったにも関わらず、批評家からはさまざまなレビューを受けた。そしてJojiは、EPのリリースと同時に、アジアの音楽レーベルである88risingと契約し、2018年の夏の代表曲となった「Midsummer Madness」で同レーベルの盟友であるRich BrianやHigher Brothersとコラボレーションし、10月下旬にBallads 1をリリースした。


コンセプチュアルで発展途上で、それでいて独特な声に対する彼の明らかなこだわりにもかかわらず、現在の姿は彼の新しい分身ではなく、むしろ彼のIRL(In Real Life、インターネットから見た現実世界)の人格と同期しているものだとJojiは断言する。

「自分を拡張したものであるJojiと違って、他のもの(※おそらくFilthy FrankやPink Guyを指している)は完全に役を演じていたんだけど、」と彼は説明し、 「つまり、どれも僕じゃないんだよ。ドラッグやそういったことをしたことがないのに、そういうクソみたいなことについてラップするラッパーとかアーティストはいる。あるいは、フランク・オーシャンがフォレスト・ガンプにまつわる曲を書くようにね。彼は本当にフォレストガンプが好きかもしれないし、ただただ本当に素晴らしいソングライターなだけかもしれない。Jojiは自分自身に少しスパイスを効かせたようなものだよ。」

 


その特徴に忠実に、Ballads 1はJojiの最も洗礼された仕事ぶり(制作とコンセプト面という両方の観点において)を表している。彼が長年にわたって培ってきた夢のようなlo-fiのトラップサウンドが、力強いバラードのバックとして対比している。Shlohmo、Clams Casino、RL Grimeなどの著名なコラボレーターをフィーチャーしたこのアルバムの収録曲は、彼自身であったり、彼の知人や彼が想像した人物像によるさまざまな視点から語られたものであることを明らかにしているのだが、アルバムの主となるテーマである「変化」は、Joji自身の人生における個人的な転向を投影させているのだろう。


「曲のイメージは内面的なものであるけど、曲の多くは僕に関することじゃないんだ。」とJojiは言う。 「解釈に関してオープンにしておくのは嫌いじゃないけど、僕はあまり自分のことに関して語るタイプじゃない。多くの曲はいろんな状況を見ている僕の視点なんだよ。僕は今、一年の半分をロスで過ごしているけど、そこでたくさんダークなものを目にしたよ。ダークってほどでもないか。でもそこはハリウッドだからさ、わかるよね。僕は彼らみたいにクレイジーになりたくないんだよ。」

 


そのダークさは、最も持ち望まれていたシングル曲である「Slow Dancing in the Dark」で最も直接的にほのめかされている。ライブパフォーマンスとミュージックビデオの両方でよく知られているその曲で、神話上の神であるサテュロスに扮したJojiに矢が突き刺さり、彼は怪我を負い、夜の通りで血まみれになるのだ。“You should be with him, I can’t compete”( 僕が敵わない奴と君はいるべきだ)と失った恋人に彼の時間を無駄にしないでくれと懇願し、“I don’t wanna slow dance in the dark.” (僕は暗闇でスローダンスをしたくないんだ)とコーラス部分で彼は叫ぶ。印象的なフレーズで綴られる、悲しくもダンサブルな曲である「Can't Get Over You」を含む、いくつかのトラックにおいて報われぬ愛がたびたび表現され、彼はこう歌うのだ:“Before I die I pray that I could be the one...if I can’t have you, no one can.”(死ぬ前に君の運命の人になれるように祈るんだ・・・僕が君を手に入れられないなら、誰にもできやしない。)と。

 


大げさとも言えるロマンチックな描写にも関わらず、Jojiは家族や、恋人や、私生活に関して秘密主義であることで有名であり、歌詞が個人的なものか、パフォーマンス的なものであるかの解釈を聴く側に任せている。“I’ma fuck up my life, we gon’ party all night, she don’t care if I die” (俺の人生をぶち壊してやるんだ、毎晩パーティをやって、俺が死んだって彼女は気にもしない)」と彼は”Yeah Right”でそうラップしその瞬間は、絶望と自己嫌悪に陥る。しかし実際には、Jojiがかなりお酒を飲んだのは昨年の大晦日が最後だったといい、最近は、自分の健康に気を配り、音楽に集中するために早寝早起きを心がけているのだという。

 


「決まった生活に戻ると、僕は朝型の人間なんだ。朝が一番、自分の気持ちが活発になる気がするんだよ。」と彼は言う。 「僕はいつも朝にビートを作るのが好きなんだけど、必ずしも自分のために作ってるわけじゃなくて、練習のために作るんだ。大体、午前11時から午後7時までスタジオで過ごすんだけど、気分によっては9時とか10時過ぎにスタジオに行くことも時々あるよ。」

 


そういった規則正しい生活は、「10代の少年のように生きている」と言う人の発言で、オンライン上で最も狂ったコンテンツを作り上げた人に秘められていた意志とはとても思えないかもしれない。インターネット™によって作り上げられた存在であるにも関わらず、Jojiは清々しいほどに古風な人物である。Instagram(よくソーシャルメディアをよく使っていたのは、もう2年前くらいになるかな–Joji談)からデジタルな娯楽(ビデオゲームとかそういうもので遊んだ事は一度も無いんだ–Joji談)に至るまで、デジタル時代の私たちを悩ませている、そういったものに彼は関心が無いのだ。

 


Jojiは、ミレニアル世代のそういった慣習を打ち破るだけでなく、アジアのコミュニティにおける固定概念に抗う存在であることの重要性も担っている。88risingが彼にクリエイティブなことに打ち込める自由を与えてくれたことが契約した純粋な理由だと語る一方でまた、アジアのクリエーターと、その延長線上にいるアジアの消費者に発言権を与え、光をあてるという、88risingの理念を愛しているのだという。

 


「それはいつも、僕に少し影を落とすものだったんだー日本で育った僕は、あくまでも白人だった。」と彼は回想する。 「誰もそれを真剣に受け止めていなかった。でも、アメリカに来たら、今度は僕をアジア人!って扱うんだよ。で、僕はいったい何者なんだよ?って感じだったんだけど、アジアの人々が今、僕を見て、僕がしている何かを通じて何かそういう気持ちにさせることができるのは、すごく僕を幸せにしてくれるんだ。」

 


音楽のスターダムの頂点に立つJojiは、学校で共に時間を過ごした友人と今も繋がっているのだという。傲慢にならないために、彼らを信用し、繋がっているのだと。「グループチャットで特に何も言ったことはないんだけど、ビルボードでランクインしたのを聞いた時、みんなに言うには十分すぎるくらいデカいことだと思ったんだ。」と彼は笑った。 「僕は、やあ、みんな、って感じで話し出したんだけど、彼らは、とにかくさ、って言って会話を続けたんだよね。彼らは僕がビデオで着ているものに関して、からかったり、こき下ろしたりするんだ。まあ、僕がやってることは彼らを笑わせるんだよね、時々ね。」

 


15歳のGoerge Millerがインターネット上で有名になるためのキャンペーンを始めてから10年が経ち、彼は今にも期待の大型新人になろうとしている。しかし、悲痛で不安定なトラップで綴られたエモショーナルなバラードのどこかに、私たちを笑わせると同時に、私たちをドン引きさせる、そんなJojiの才能が今も存在していることに気づくのはうれしくもあるのだ。


「みんなは僕がやっていることが音楽だけではないことを知ってるんだ。」とJojiは言い、 「どんなことでもいいんだよ。彼らは僕が次に何をするかを待ってるだけなんだ。ただ、僕はここにいるだけなんだよ。まだ楽しめるものがある間はね。」

 

(終)